7月24日中日新聞
Q.下の奥歯に痛みと腫れがあり、歯科医院で折れていて抜かなければならないと言われました。硬いものを噛んだ覚えはないのですが、抜かない方法はありますか。
(28歳男性)
A.実際に診察して、レントゲンなどで審査しなければわからない典型的な症例ですが、実は近年虫歯や歯周病より破折による抜歯が急増していることは事実です。本人に記憶がないことがほとんどで、大部分は夜間睡眠中に食いしばりや歯ぎしりによって亀裂が入り、食事などのときに本人でもわかるような破折をしてくることが多いようです。
以前にもこの欄で書きましたが、ストレスがあるとそのストレスを睡眠中に消すために激しい食いしばりを行い(食いしばりの効果は安定剤にも匹敵します)、その結果知らないうちに割れてしまうという結末を迎えることが多々見られます。
割れ方、折れ方によっては残せる場合もあります(歯茎よりも上で横方向に割れたような場合)が、竹を割ったように縦に真っ二つに折れたような場合は現在の医療で保存は困難、抜歯しか方法がありません。
予防法として日常からナイトガード(保険適用)などの防御策をとることが推奨されます。人によりナイトガードが数日で破壊されてしまうことも散見し、より強固なガードを作り直す患者さんも増えています。
虫歯、歯周病と並んで力による破折、歯の喪失はストレス社会の現代病最たるものであると考えられています。
歯科医師 プロフィール
滝高校、公立九州歯科大学卒業。
京都大学医学部口腔外科入局。
口腔腫瘍・顔面外傷の口腔外科専門医として多くの外科手術を担当。福井県立病院口腔外科医長を経て各務原市で口腔外科クリニックを開業。
現在は、DNA検査を用いた歯周病治療や、人工骨を用いた再生医療インプラントに多くの実績を持つ。